【インタビュー】作曲家・Ko Tanakaさんに聞く 『YOKOHAMA Short Stories』の聴き所

Ko Tanakaさん
  1. 現在に至るまで、音楽の経歴をお教えください
    16歳吹奏楽ではじめて打楽器に触れて、17歳で作曲を始めました。23歳でプロになって26歳で途米、バークリー音楽大学を出て今はブロードウェイミュージカルの仕事をしています。幼少期からピアノをやっていたような人ではありませんが単に好きで向いていたんだと思います。
  2. お好きなミュージカル作品、またミュージカル作家を教えてください
    スティーブン・ソンドハイムさんが好きです。”イントゥザウッズ”という作品で彼の音楽に衝撃を受けて渡米を決めました。米ミュージカルの言葉と物語、音楽にからめられた文学性が好きです。全然関係ないですが同じ理由で日本の漫画も大好きです。素晴らしいストーリーと文学性があります。僕にとっては米ミュージカルも日本の漫画も同じくらいレベルの高いエンターテイメントです。
  3. 日本とアメリカとで、ミュージカル作品を作る上でどんな制作過程の違いがありますか?
    何から何まで違うので一言で言えませんが、脚本家、作詞家、作曲家の三人がなにかを企むところから始まるのは共通項かもしれません。様々なショーがありますのでそうではないこともあるとは思いますが。あとは、日本の選挙の仕方とアメリカの選挙の仕方の違いを説明するくらい違うのでちょっと言い切れません。
  4. 今までのお仕事の中で印象的なエピソードがあればお聞かせ下さい。
    歌詞を書いた方がすでに亡くなっていた関係で、芝居の中の破格に長い歌詞を一切変更なしで音楽でやりきるというシチュエーションに直面したことがあります。曲想を変えたり音階をシフトさせたりしてなんとかやりきりましたがそれ以来やろうと思えばここまでいけるんだなという自信につながりました。でも作詞というのはあくまでソングライティングなので、できれば一緒にお話をしながら作りたかったですね。
  5. 『YOKOHAMA Short Stories』に携わった印象をお聞かせ下さい。
    主宰の河田さんはとにかくレベルの高いものを作ろうという意思を感じる方で、台本の解釈や音楽の提案などで充実した時間を過ごさせていただきました。物語を追求しようとする気風も似たとこがあるように思います。今回僕はNYからのリモート参加でしたので他のスタッフの方々、俳優の方々にはお目にかかっておりませんが、熱量のある現場の動画をいただいたりして、楽しく制作させていただきました。
  6. 今回の作品の制作過程を教えていただきたいです。
    戦後の横浜に流れていたはずのムード、人の気持ちなどを想像する作業に制作日の大半を使いました。Google mapで現代の横浜の街を歩いたりしてみましたね。いつも台本の読解と舞台背景を理解するのにかなりの時間を使います。そこがわかれば作曲すべきことはもう見えると思っています。
  7. 『シウマイガール』の聞きどころをお聞かせ下さい
    一曲目“Good Morning Yokohama”という曲があります。主人公が横浜の街について歌う元気なソングですが、ただ元気なだけではない作りにしてあります。それは例えばなにか辛いことがあった後に”大丈夫”と言う時誰しも喉がきゅっと閉まるような感覚を作るようなことです。そういうエッセンスを入れないと本物にならないと思ったので、それぞれの楽曲にはそういった裏の感情がコード、リズム、メロディの高さなどで少しずつ表現してあります。観る時にはそれに気付いても気づかなくてもいいんですが、細部にこだわるとショーの真実味が増すのでやっています。
  8. 『周ピアノ』の聞きどころをお聞かせ下さい。
    フォークソング調の曲をずっと同じ形式で歌い続ける曲があります。劇的な展開がない分、じっとそれを時間をかけて見つめることでなにかが浮かび上がってくるような仕組みにしてあります。演劇の面白いところは舞台の上、目の前でなにか起こると、その裏の意味を考えたくなるような気持ちになることだと思っています。そういう気持ちをくすぐるような音楽にしてみました。
  9. Koさんにとってミュージカルとはどんなものでしょうか。
    とてもレベルの高いエンターテイメント。作曲家としては現代のオペラといえるくらい面白いジャンルだと思います。色々なジャンルを見てきましたがこれをやりたい!と思ったのはそういったミュージカルでした。
  10. 最後に一言いただけますか?
    声をかけていただいて嬉しかったのと、とても楽しく作らせていただきました。楽しく観ていただけたらと思います。